いつでも微笑みを

体を壊してやりたいこともなくなってしまったから、自分が思っていることを伝えたいことをとりとめもなくかいていくよ。

【読書感想】優雅な歌声が最高の復讐である/樹戸英斗【少し立ち止まってみよう】

「いいかい。困ったときは、思考を止めてはいけないよ。思考の停止は停滞を生み、停滞は退化に繋がる。退化の一番先にあるものは死だ。思考を止めた瞬間、人は確実に精神的な死へと一歩近づいている。思考停止は死に至る病だ。思考を止めるな。考え続けろ」

 あらすじ

走れないフットボーラーと歌えない歌姫の、出会いと再生と恋の物語。

俺からサッカーを取ったら何も残らない。
挫折から立ち上がる、少年と歌姫の物語。

 俺は怪我でサッカーを辞めた。他にやりたいことなんてない。そんな灰色の高校生活で出会ったのが、歌姫の瑠子だった。学校中に注目される瑠子は、夢を失った俺には近寄り難いけど、その瑠子から合唱コンクールで指揮者に指名された。なんで俺が――?
 私は歌えなくなってアメリカから帰ってきた。クラスのみんなは歌姫「RUKO」に期待している。でも、本当のことを言えず辛い時、サッカーをやめて無気力になった隼人がいつも助けてくれる。隼人はかつては眩しかった。私のことは覚えていないみたいだけど、また輝きを取り戻して欲しいと思ってる――。

公式サイトより引用

感想

 誰のために、何のためにやっているのだろうか。考えはじめると戻ってこられなくなりそうだけど何故か考えてしまうことってありませんか。何かに行き詰まったり失敗したりしたときとかに考えてしますことが多いのかな。そういうときってしばらくもやもやが収まらないのですよ。結局は誰のためなんていう事は無くて自分自身のためなんですよね。そうやって頑張るしか無い。でもそうやってやっていても長続きしない事ってやっぱりあるんですよ。それってもしかしたら必要の無いことなのかもしれませんね。一度考え直してみるのもいいのかもしれない。少なくとも私みたいに体を壊してまで続けることはないと思いますよ。

 主人公隼人は怪我でサッカーをやめてから何をするにも無気力になってしまった高校生。ユースでも活躍していただけに以前と同じ動きが出来なくなったときはそうとうな落ち込みだったのだでしょう。その気持ちはなんとなく分かるんですよ。私も仕事をやめてすぐはなんにもやる気が起きなかったので。なので隼人君は前半は相当悩みます。そんなときに瑠子と出会えたことは彼にとって間違いなくプラスになりました。

 それは瑠子にとっても同じ事で、歌が歌えなくなった彼女は隼人がいなければきっと日本の生活に慣れることはなかっただろうし、もう一度歌をうたいたいという気持ちにもならなかった。二人とも似た境遇をもっていたから惹かれ合ったんでしょうね。

 隼人は無気力にはなっていたけれど性根は腐っていなかったのがポイント高いです。それに隼人自身も彼がサッカーで今まで通りのプレイが出来なくて、失望しどん底にいたとしてもそれでもサッカーを嫌いになることが出来ないと気がついていたのだろうと私は思っています。あとは誰かに背中を押してもらえれば。それはきっと瑠子も同じだったのでしょう。

 二人は傷のなめあってるだけだと厳しい意見もあるかもしれません。確かにいつまでもそのままではよくはないでしょう。しかしこの二人はまた前を向いて歩き出しました。一時的だったら足踏みしたっていいんじゃないかなって私は思います。

まとめ

 主人公達はやりたいと気がつきそれを選びました。再びスタートラインにたちました。ここからどうするのかそれがとても大切になることでしょう。でも一度挫折しても戻ってこられた彼らなら、きっと大丈夫。選ぶのはとても難しいことです。でもそこから逃げないで欲しい。逃げなければ未来はきっと開けるから…