【読書感想】電池式 君の記憶から僕が消えるまで/庵桐サチ【恋愛症候群】
「あんたこそ何が分かる。あいつはあんたのロボットじゃない。感情のあるひとりの人間なんだ。ひとりの女の子なんだ! 確かに普通とは違うかもしれない。でも、なんでこの程度のことを望むことも許されない。なんで母親であるあんたに今日のことを教えなかったと思ってるんだ!」
あらすじ
電池で動く世界で、僕たちは恋をする……
巧介には未来という気になるクラスメイトがいた。まるで覇気の感じられない瞳を持つ彼女と次第に仲良くなる巧介。しかし未来は重い病を抱えていた。二人に残された時間は後わずか。甘くせつない青春ストーリー。公式サイトより引用
感想
私の歌を聴くのが好きです。はじめてJPOPと呼ばれるものに興味を持ったのは小学5年生の頃でした。もともと音楽の授業で歌うのは好きだったので、友人の影響とは言えそれは必然だったのかなと感じています。初めて買ったCDはMr.Childrenの「Tomorrow never knows」です。当時すごい人気で私も好きな1曲です。それからいろんな音楽を聴いてきました。
そんな私が今好きな歌手はさだまさしさんです。とはいえまだまだファン歴は浅いのですが。さださんとの出会いもいつかかけたら書き残しておきたいですね。
さだまさしさんと言えばやはり「関白宣言」が有名な曲ですね。当時は女性蔑視とかいろいろと賛否を巻き起こしたそうです。当時としては長い曲だったのでテレビではフルコーラスで歌わせてもらえなかったそうですが、この歌はフルコーラス聴いてこそ良さが分かる曲なんですけどね。
今回紹介したいのは「恋愛症候群」という曲。この曲はじめは恋愛をすると普段しないような行動を起こすよね。誰しも恋に落ちたら相手がどんな人でもその欠点すら愛おしいと思うのだけれど、それは恋という魔法にかけられていてその魔法は徐々に冷めてくる。それをA型だったら…B型だったらとコミカルに歌うのです。当然血液型で行動が決まるわけないのでちょっとしたお遊びですよね。
この歌の素敵なところはラストの歌詞にあります。それは
恋は必ず消えてゆくと誰もが言うけれど
ふた通りの消え方があると思う
ひとつは心が枯れてゆくこと そしてもうひとつは
愛というものに形を変えること
相手に求め続けてゆくものが恋 奪うのが恋
与え続けてゆくものが愛 変わらぬ愛
だから ありったけの思いをあなたに投げ続けられたら
それだけでいい
とても素敵な歌詞ですよね。この歌詞が好きすぎて友人の結婚式のスピーチで締めの言葉として贈ったこともあります。
奪うのが恋与えるのが愛。とても深いです。これを書きながら改めて聞いてみたのですが、さださんの歌い方も良いのですよ。心をぐっとえぐっていくのです。気になった方は是非聞いてみて下さいね。
本書はとても美しくて、優しくて、温かくて、切ないお話でした。タイムリミットが決められた少女と一緒に寄り添う少年のお話です。
はっきり言ってネタもありきたりだし先の展開も簡単に読めてしまいます。しかし作者の「伝えたい」「書きたい」という気持ちがこれでもかと伝わってきてラストは涙を流しながら読みました。
主人公は未来に恋をします。しかし未来は病気を抱えていて普通に過ごすことすら許されない。それでも主人公は決して未来をとがめること無く最後まで寄り添い続けます。その様子は先に紹介した恋愛症候群のようです。残り短い時間でもありったけの愛をあなたに投げ続けられたらそれだけでいい。恋した主人公は時間とともに未来を愛するようになる。主人公の優しさやにぐっとこみ上げてくる物がありました。
長く生きるために感情を殺し生活していた未来もそんな主人公と出会い少しずつ変わります。恋愛をして感情を表に出すことはなにもいいことだけではありません。ときには母や友人とすれ違ったりすることもありました。しかし私は思うのです。感情を殺して生きるということはすでに死んでしまってるのと同じ事なのではないのかと。嫌なこともあるでしょう。けれどそれと同じくらい素敵なこともある。感情をださないことは「無」という状態です。無は0なのです。0に言葉をかけても0にしかならないです。
まとめ
生きると言うことやその概念、価値観は人それぞれで何が正しいのか間違っているのかなんて哲学者だって答えを出すことは難しいです。難しい題材を作者なりの気持ちを込めた意欲作だったのかなと。
物語のラストに関して私は、あれでよかったと思っています。あのラストであればまた恋をして愛することができるから…