いつでも微笑みを

体を壊してやりたいこともなくなってしまったから、自分が思っていることを伝えたいことをとりとめもなくかいていくよ。

【読書感想】やり残した、さよならの宿題/小川晴央【一生懸命は恥ずかしいことじゃない】

「そんなことない……!あんたは頑張った!よくやったよ!こんなにボロボロになるまで戦ったじゃないか!立派だよ」

 あらすじ

 小学生の青斗が住む海沿いの田舎町には、ひとつの伝説があった。それは土岐波神社にお願いすると、神様のトキコさまがやり直したい過去に“時渡り”させてくれるというもの。
 両親の離婚で、大好きなこの町と離ればなれになってしまう少女・鈴。
 そんな彼女のために最高の夏休みをプレゼントしようとする少年・青斗。
 二人きりで過ごす最後の夏休み。神社で遊んでいた彼らの前に現れたのは、遠い所からやってきたという不思議な女性・一花だった。
 ――これはそれぞれが胸に秘めたさよならの物語。

公式サイトより抜粋

 感想

 子供の頃って特に小学校中学年くらいから男の子ってなんだかはすに構えがちになる気がしませんか。具体的には一生懸命やることが格好悪いみたいなそんな風潮が出てきたりとか。それってすごく格好悪いんだけどなかなか気がつかないですよね。人間はコミュニティを形成してそこから溢れないようにしようとします。それは子供も一緒なのかな。でも思うのですよ。無理して溢れないようにコミュニティにあわせていると疲れちゃうなって私は思うんですよね。

 物語のはじめの方は引っ越してしまう鈴のために青斗が最高の思い出を残してあげるために奮闘するお話なのかなと読み進めていました。ところが読み進めてみるとまさかのどんでん返し。まさかそういうことだったとは…と思わせる展開に驚きを隠せませんでした。

 このお話で私がいいなと思った点はまずはキャラクターです。主人公青斗君は裏表の無いまっすぐで一生懸命な男の子。鈴ちゃんは引っ込み思案だけど主人公が大好きな思いやりのある女の子。そして大学生で絵描きの卵の一花さんがいい味を出すんですよ。青斗が困ったり挫けそうになると的確にアドバイスをしたり励ましたりしてくれる素敵なお姉さん。三人の中がとってもよくて読んでいてとにかく楽しいそうという雰囲気が伝わってきて温かい気持ちになります。

 三人でひと夏の楽しい思い出を作って終わりなのかなと思ったら…まさかの展開に。数々の小さな伏線を最後に回収していきます。しかし伏線を回収したことがすごいのでは無くて青斗の本当の目的を知ったときに、彼の強さやなんとしてでも成し遂げるんだという強い気持ちに驚くと同時に今までどんな思いで頑張ってきたんだろうと心が乱されました。
 そしてラストの鈴に会いに行くシーンでの青斗と一花の台詞がとてもいい。心にぐさぐさと突き刺さります。そこからの青斗の暴露で鈴がお母さんに助けをもとめるシーン。もう涙無しには読み進めることが出来ませんでした。

まとめ

 一生懸命やればなんでも成功するとは思いません。しかし一生懸命やらなければ絶対に結果は生まれないこれは間違いないことです。青斗の実直さは読者の心に突き刺さることでしょう。そんな青斗に一花も鈴も動かされていく。素敵なお話ですね。

 このお話を読んでもう一度頑張ってみよう。あなたもきっとそんな気持ちになることでしょう。